【西田雄平の小さな発見】製造業の生産性向上は「最速」より「ロスのない流れ」
「ガタン、ゴトン……」
先日、埼玉県の大宮駅から福岡県の久留米駅まで、あえて新幹線で移動してみました。
所要時間は約6時間。単純な移動時間だけを比べれば、飛行機の方が1時間ほど早く到着します。
ところが、実際に移動してみると印象は少し違いました。
新幹線の場合、乗り換えはわずか2回。飛行機での移動にありがちな、空港までの在来線やモノレールでの移動、手荷物検査、搭乗までの待ち時間、搭乗後の待機、到着後の移動や乗り換えといった細かなロスが、ほとんどありません。
車内ではまとまった時間を確保できるので、仕事や研究にも集中できます。途中でデッキに出て軽く体を動かすこともでき、久留米に到着したときの疲れも、想像していたより軽いものでした。
単純な「移動時間」だけなら飛行機の勝ち。
しかし、
- 実際に仕事に使える時間
- 待ち時間
- 乗り換えの回数
- 移動による疲労
まで含めて考えると、今回は新幹線の方が優れていたのです。
製造現場でも「一部分の速さ」に目を奪われない
これは製造業にも通じる話です。
例えば、
「機械の回転数をもっと上げよう」
「サイクルタイムを短くしよう」
と、一つの工程だけを速くする改善があります。もちろん、それ自体は悪いことではありません。
しかし、その結果として、
- 段取り時間が増える
- 試し打ちが増える
- 仕掛品が増える
- 運搬が増える
- 前後工程で手待ちが発生する
- 不良や手直しが増える
のであれば、工場全体として本当に生産性が上がったと言えるでしょうか。ある工程を10秒速くしても、その後で10分待っていたら意味がありません。一部分だけを見る**「部分最適」ではなく、受注から生産、出荷までを一本の流れとして捉える「全体最適」**が重要です。
本当に見るべきは「製品が完成するまでの総コスト」
製造現場では、実際に加工している時間だけでなく、その間に多くのロスが潜んでいます。
加工待ち、段取り、運搬、停滞、手直し、確認待ち――。こうした時間は、一つひとつを見ると小さく感じるかもしれません。しかし、受注から出荷までの流れ全体で見ると、かなりの時間を占めていることがあります。
だからこそ、
「どの工程を速くするか」ではなく、
「製品が完成するまでの流れの中で、どこにロスがあるのか」
を見る必要があります。
そして、そのロスを見える化し、一つずつ潰していく。
当社が実施するコンサルティングでも、こうした全体最適の視点から問題を可視化し、収益改善会議の中で改善を積み重ねていきます。
「最速」より「ロスのない道」
飛行機と新幹線を比べて感じたのは、必ずしも一番速い手段が、一番効率的とは限らないということでした。
製造現場も同じです。
個々の設備や工程を速くすることだけに目を向けるのではなく、
受注 → 生産 → 出荷
までを一本の線で追ってみる。
皆さんの会社にも、「加工していない時間」「止まっている時間」「行ったり来たりしている時間」が隠れているかもしれません。
最速を目指すより、ロスのない道をつくる。
リードタイム短縮やコストダウンを考えるときに、ぜひ一度、全体の流れを眺めてみてはいかがでしょうか。
2026年8月2日
西田雄平
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